エピソード5⃣     ―second daddy―

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さかのぼる事半年前―。 オイラはフイリピン人の、あるカップルを駅前から乗せた。 二人とも二十代後半だった。とは、思うけど―、 オイラは、至って拘らないから、後になっても細かいところまでは聞かなかった。 元々、言葉というのに興味があったオイラは―、 外国の客が乗ると、よく、 「どこの国の方ですか?」 と、質問をする。 それを糸口に、 その国の言葉を幾つか教わるのである。 それが覚えられたかは―、 あはっは―! まず、別問題だが―、 決まって、どの国の人も気持ち良く答えてくれるし、 仲良くなれた気がして―、それが、実に楽しい! その日も、そうだった。 「・・・・・で、愛してるは?」 「maharukita」 「なに?マハル…」 「KITA!」 「あ―、マハルキタ、ね」 てな具合に…。 その時! 男の方がいきなり―、 「オニイサン!スケベだね!ソレ、誰に言う! パロパロなァ~~」 「確かに―、助平衛だ! あはっはははははは! …んで、なに?その――、 パロパロってぇのは?」 「お兄さんチョウチョ!」 今度は女の方が答えた。 「えっ?蝶々のこと? どうしてオイラが蝶々なんだい?」 「チョウチョは―、花から花に飛ぶ!ディバ~(デショウ)浮気モノね~」 「あ――なるほどね~! それで、パロパロ―! あはっははははははは! 面白え―や!」 その二人の名前はオーリーとジョアン。 彼女は店でホステスとして働き、彼は、同じ店で雑用を引き受けていた。 オイラとは、その日を切っ掛けに仲良くなり―、 二人は、仕事がハネると帰るのに、オイラのタクシーを携帯で呼んでくれた。 オイラも―、 飲めないが何度かは店の方に顔を出し―、 やがて・・・・ 二人は、オイラを親しみを込めて、クーヤーと呼んだ。 フイリピンの公用語は英語だが、普段は、タガログ語を使っていて――、 クーヤーとは―、 その、タガログ語で、 お兄さん。 と、いう意味である。
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