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さかのぼる事半年前―。
オイラはフイリピン人の、あるカップルを駅前から乗せた。
二人とも二十代後半だった。とは、思うけど―、
オイラは、至って拘らないから、後になっても細かいところまでは聞かなかった。
元々、言葉というのに興味があったオイラは―、
外国の客が乗ると、よく、
「どこの国の方ですか?」
と、質問をする。
それを糸口に、
その国の言葉を幾つか教わるのである。
それが覚えられたかは―、
あはっは―!
まず、別問題だが―、
決まって、どの国の人も気持ち良く答えてくれるし、
仲良くなれた気がして―、それが、実に楽しい!
その日も、そうだった。
「・・・・・で、愛してるは?」
「maharukita」
「なに?マハル…」
「KITA!」
「あ―、マハルキタ、ね」
てな具合に…。
その時!
男の方がいきなり―、
「オニイサン!スケベだね!ソレ、誰に言う!
パロパロなァ~~」
「確かに―、助平衛だ!
あはっはははははは!
…んで、なに?その――、
パロパロってぇのは?」
「お兄さんチョウチョ!」
今度は女の方が答えた。
「えっ?蝶々のこと?
どうしてオイラが蝶々なんだい?」
「チョウチョは―、花から花に飛ぶ!ディバ~(デショウ)浮気モノね~」
「あ――なるほどね~!
それで、パロパロ―!
あはっははははははは!
面白え―や!」
その二人の名前はオーリーとジョアン。
彼女は店でホステスとして働き、彼は、同じ店で雑用を引き受けていた。
オイラとは、その日を切っ掛けに仲良くなり―、
二人は、仕事がハネると帰るのに、オイラのタクシーを携帯で呼んでくれた。
オイラも―、
飲めないが何度かは店の方に顔を出し―、
やがて・・・・
二人は、オイラを親しみを込めて、クーヤーと呼んだ。
フイリピンの公用語は英語だが、普段は、タガログ語を使っていて――、
クーヤーとは―、
その、タガログ語で、
お兄さん。
と、いう意味である。
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