三章

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静かに、そして心は躍るように外へ シンとした と表現したいような澄んだ風 手に顔に、むき出した肌が透き通るよう そして過去しかない街に踏み出す ほんの数分で禁煙ファシスト達の巣窟はもう遥か遠くのよう コーラ、そうコーラ リッターサイズにしよう そう思う 歩きながらタバコを取り出し、パリパリシャツがやってたように片手でくるりと回してみる 落とす なにもなかったようにタバコを拾う 上手くいかないものだな そういえば高校の時にペンでも何でも棒を横に縦に指先で器用に回す奴がいたな やめろいうのに試験管を回し落として割った奴が 誰に対しても好き勝手いう奴だったのに、その時は妙にビビってパニクってた そんなの安いもんだし気にするなと言ってもアタフタしてる 見るに見かねて代わりに 「すいません割ってしまいました」 「いいよ、それより怪我はなかったか?」 心配されてしまった 別に誰がやったかは言ってないから嘘じゃない 振り返るとそこにいた 彼の安堵の表情が今も目に浮かぶ 人によって弱点なんていろいろだ 得意なことも もうタバコを回すのはやめた
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