《悪魔と少年》

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遠いお空が恋しくて、何度も飛ぼうとしたけれど、わちには翼がありません。 街を望める小高い丘の上、そこに一本生えている大きな木。 わちはここから飛び立ちます。 あちに会う為に。 わちは、綺麗な女性に会いました。 それはそれは美しい人でした。 あちは、お空からやってきた天使でした。 右手に光を、左手には闇を持っていました。 もう一度会いたい、もう一度だけ会いたい。 わちは、あちに恋をしました。 あちとの出会いは一瞬の瞬き。 あちは、あっという間に天に帰って行きました。 わちはそんなあちに溺れました。 それは、底なし沼のような感覚。 あちを見つけるために、わちは遥か遠くのお空を何度も眺めました。 だけど、わちはあちを見つけることが出来ません。 (見つけることが出来ないのならば、あちに会いに行けばいい。) わちは、そう考えました。 だけど、わちにはお空を飛ぶための翼がありません。 流れ往く数々の星の欠片。 わちをあちの元に誘って(いざなって)ください。 空を見上げ、祈った事数知れず。 そんなわちの願いを聞きつけ、悪魔がやってきました。 「一翼の翼をわちにあげよう。 だけど、その代わり一つ頼みがある。」 悪魔は、わちに交換を持ち掛けました。 「何をすればいいのですか?」 わちは、悪魔に尋ねました。 「恋する事のやり方を教えてくれと。」 恋するわちを見て、恋をしたくなった悪魔。 わちは悩みました。 恋する事にやり方はないのだから。 「恋はやるものではなくて、するものです。」 わちは、悩んだ挙句、このように答えました。 すると、それを聞いた悪魔は、その場から去っていきました。 一翼の真っ黒な翼を置いて。 そして、わちはその翼を食べました。 あちに会うために。 そうしたら、左側に黒い翼が生えました。 だけど、まだまだお空は飛べません。 翼は、一翼では意味を成さないものだからです。 街を望める小高い丘の上。 ここに座り、わちはあちのことを考えています。 空には、絵に描いたような満天の星空が広がっています。
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