《梟と真っ赤な林檎》

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わちは大きな木の下、一人佇んでいます。 あちのことを考えながら。 わちは、あちに会いたいです。 届きそうで届かないあち。 わちは、何が足りないのかを考えています。 すると、突然木から一つの真っ赤な林檎が落ちてきました。 わちは、その真っ赤な林檎を黙って眺めています。 そして、その真っ赤な林檎を拾い上げ、わちは食べました。 それは、あちに会うためなのです。 わちは知っています。 真っ赤な林檎には魔力が宿っている事を。 真っ赤な林檎は無くなってしまいました。 わちが全て食べてしまったから。 わちは魔法を使います。 あちに会うために。 魔法に願いを込めます。 あちに会えるようにと。 目を閉じ、この想いを魔法に込め、魔法を唱えます。 わちをあちの元に、いざ導かん。 ........。 何も起こりません。 わちはもう一度試します。 あちに会うために。 あちと一緒なんです。 右手に光を、左手に闇を。 異なった二色の両翼にも願いを込めます。 あちに会うために。 わちをあちの元に、いざ導かん。 ........。 思えど、試せど、動かない翼。 心地いい涼やかな風。わちをあちの元に運んで下さい。 わちが、風にお願いをすると、木の上から声が聞こえてきました。 「わちはそこで何をしているの?」 どうやら、わちに話しかけているようです。 「わちは、あちに会える方法を考えています。」 わちは、その声の問いに答え終えると、木の上にいる声の主の正体を確認してみることにしました。 そこには、金色の体に赤い目をした一羽の梟(ふくろう)がいました。 「真っ黒と真っ白な異なった二色の翼だなんて、わちは変わった翼を持っているんだね。 ふちも、わちに負けないくらい立派な翼を持っているよ。」 ふちは、わちの翼に注目しながらも、ふちの翼の自慢をしました。 「わちが翼を手に入れたのは、あちに会うためです。 あちに会うためには翼が必要なんです。」 それを聞いたふちは、微笑んでいます。 「ふちがわちに飛び方を教えてあげよう。」 わちはふちのその言葉を聞いた途端、とても嬉しい気持ちになりました。 これで、あちの元へ会いに行ける。 そのような思いが、わちの中に溢れてきたからなんです。
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