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「それマジ!!」
「きもくねっ」
桜が咲きはじめた晴れやかな季節
まだ冬の足跡を感じながらも、穏やかな太陽の温もりに自然と気持ちがはずみ
誰もが若葉の景色に未来を描く
神崎怜
この少年も新しい季節の訪れに、夢や希望に胸を踊らせ新学期をむえていた―――
しかし、そんな装いとは裏腹に、教室の外から聞こえてきた声が、神崎怜から全てを奪っていった……
「ほらアイツじゃね?」
教室を覗き込む様に、数人の男子生徒が此方を指差してナニやら話している。
それは決して大きな声と言う訳ではかった…しかし2年生に進級し新しいクラスになった事で、普段よりも静かな教室に男子生徒達の声が響く形になった。
指差す先に自然と視線が集まる。
怜も意味も解らないままに、男子生徒達をチラッと見ては、不可解そうな表情を伺わせた。
「うわぁ!!こっち見たって」
「あはははははっ…」
"不自然な笑い声"
怜も含め、教室にいる生徒には意味が解らないのだ…そう感じるのが当たり前だろう。
だが次の瞬間!
男子生徒達が上げた声に全てを理解させられた…
「アイツ、ゲイなんだろ
男が好きってさぁ~
マジでヤバいよねっ」
瞬間!!
教室中が静まりかえった―――
怜の中で全てが停止した
鼓動が止まる感覚
時がスローモーションの様に流れ、ナニが起こったのか解らないまま呆然とする。
それはほんの数秒…
次第に鼓動が速さを増して全身を駆け巡る。
ナニも出来なかった…
ナニも言えなかった…
そこから先は、あまり記憶にない…
確かに耳に届く言葉達
周りからは笑い声
小さな悪意を感じる間もなく
全てが音もなく消え去っていく
どれ程、じっとしていただろうか…
身動き一つせずに席に座り…
ずっとうつ向きながら一点を見つめていた…
憶えているのは、新任の先生のサヨナラの挨拶
その瞬間、鞄を取り真っ先に教室を後にしたこと…
"ナンで?"
そんな不安を何度も何度も頭の中で繰り返しながら走っていた…
ここは夢の世界なんだ――
現実を現実だと受け止められないまま、全力で走った――
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