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透き通るような白い肌
すらりと伸びた細い脚
強く抱き締めれば折れてしまうのではと思う程のしなやかで華奢な肢体
傍にいれば傷付けてしまう…純粋に自分を慕っている隼人を…
武は隼人から離れる事しか自分の理性を保つ術が見つからなかった。
「いっそ…こんな仕事辞めちまうか…」
自嘲気味に笑う。暫くしてゆっくり起き上がり、スーツの乱れを直して部屋を出る。
コツコツと靴音を立てながら長い廊下を歩き、ある部屋の前で立ち止まった。
大きく深呼吸してから目の前の扉をノックする。
「隼人様、失礼します」
返事がないのはいつもの事。構わずに扉を開けて視線だけで中の様子を探るが主人の姿が見当たらない。
怪訝に眉を寄せて部屋に入れば、ベッドに横たわる人影を見つけて安堵の溜め息をついた。
起こさぬよう音を立てずそっと近付き、寝顔を覗き見る。端に腰を落とせばベッドが軽く軋み、銀色の艶やかな髪に手を伸ばして撫でてやる。柔らかく心地好い感触に思わず笑みが零れた。
「隼人、好きだぜ…」
無意識に零れた言葉。ずっと胸に秘めていた想いだった。
きっと、一生伝えることはない一言だ。そう思いながら柔らかな銀髪を撫でていれば不意に隼人の瞳が開いた。
ゆっくり振り向き、武の黒い瞳とぶつかり合う。
「!!……は、隼人っ」
撫でていた手を慌てて引っ込めて背中に隠してしまう。あまりにも突然過ぎる出来事にいつも冷静沈着であった執事が狼狽えた。
いつから起きてた?
「……………………」
隼人は無言のままじっと見つめる。居心地の悪さに、先に目を逸らしたのは武の方だった。
「……もう、撫でねぇの?」
静寂の中ぽつりと呟く。意味が分からず武は再び隼人に視線を向けた。隼人は未だ、真っ直ぐに武を見つめたままだった。
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