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今日も俺のダメライフに新たな伝説が刻まれる。
その日、数学のテストで赤点を取ってしまい、そのせいでまた補習を受けなきゃいけなくなった。
あーぁ、最悪だ…。
しかも、いつもなら俺と同じく補習の常連であるはずの山本は珍しくぎりぎり赤点を回避したらしく、今はグラウンドで部活に勤しんでる。
一人で補習なんて…惨め窮まりない……サボって帰りたい…。
でも、それすらも叶わない。
だって獄寺くんが『大丈夫っスよ十代目!』とか言って頼んでもいないのに俺の机の隣に椅子を持って来て、俺の赤点テストを広げるなり間違えてる問題を一つずつ丁寧に解説し始めたりするから。
そんなことされたら帰るに帰れない。
あぁもう…有り難迷惑ってこうゆうことを言うんだな。
そんな俺に集中力があるわけもなく、何時もなら理解出来る獄寺くんの説明が今は日本語にすら聞こえない。
集中出来ない理由は俺にやる気がないのと
さっきから獄寺くんが気になる………からだと思う。
改めて間近で見ると、獄寺くんは綺麗に整った顔をしてるんだ。
日本人では有り得ないような綺麗な翡翠色の目、筋の通った形の良い鼻、ぷっくりと張りのある唇は綺麗な薄赤色をしていて……思わず触れてみたくなる。
あと、考える時の癖なのかな?脇から垂れてる髪を軽く掻き上げると普段隠れてる彼の耳がチラリチラリと見えてしまっていて
何だろう……この気持ち
胸がもやもやする
彼に触ってみたい
そんな気持ちが込み上げる……
俺が一人でそんなことを考え込んでいたから、心配そうに俺を見つめる彼の視線に直ぐには気付かなかった。
ふと顔を上げ、彼と目が合えば安心したのかいつものように笑顔を浮かべてくれて。
「どうしたんですか?十代目」
俺だけに向けてくれる優しい笑顔。優しい声。
君が悪いんだ。
君が俺を狂わせた。
この先を越えれば、俺のこの得体の知れない感情の正体がわかるかも。
そう思った直ぐ後
二人分の椅子が激しい音を立てて倒れていた。
俺は
思ってたよりもずっと細い肩を冷たい床に押し付けて、痛みにその綺麗な顔を歪めた獄寺くんを見下ろしていた。
End
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