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「…………はぁぁ」
武は自分に任された一通りの仕事を終えるなり、部屋に戻りベッドに身を投げた。
深い溜め息が無人の部屋に響く。
「隼人、今日も機嫌悪かったな。もうどんだけ…あいつの笑顔を見てないんだろうな…」
脳裏によぎる主人の不機嫌な表情。いつも眉間に寄っている皺が、隼人の秀麗な顔を台無しにしていると思わず苦笑を浮かべてしまう。
自分が隼人との関係に距離を置くようになってから、日に日に隼人の表情から笑顔が無くなっていることに武自身も気付いていた。
距離を置かざるを得なかった。そうしなければ自分を保てなかったから…
自分がこの屋敷に雇われた頃、世話を任された主人はほんの子供だった。
無邪気に自分を慕ってくれている主人に対し、武はまるで自分の弟のように接し可愛がっていたのだ。
隼人が成長し、幼かった頃の可愛さに加え美しさを増したその姿に邪な感情を抱くようになるまでは。
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