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あたしはユラに抱えられたまま、陸へと、みんなのところへと連れていってもらった。
「なんでわかっちゃうのっ?あたしとリジー、似てるでしょ?」
「リジー様はあなたとは違いますっ」
「そうだよっ。リジーお姉ちゃんは、そんな魚くさくなんかないよっ」
「魚くさいなんてひどいっ。ミシェル様はあたしをリジーと思ってくれたのにぃっ」
そんな言い争う声が近づくにつれて聞こえてきた。
どうやらオリビアが自分で魔法をといたのとは違うみたい。
「メリー、クリスっ」
あたしが岩場の上の二人に声をかけると、二人は気がついてくれて、あたしがユラを見ると、ユラはあたしをその岩場の上へと下ろしてくれた。
ユラの腕から離れるのは淋しかった。
「ああっ!ユラ、あんたがなんでここにいるのよっ?」
オリビアはユラを見ると文句を言うように声をかける。
「おまえが変な魔法を使うからだろ。リジーに謝ったらどうだ?」
「ふんっ。謝るつもりなんかありませんよーだっ」
「オリビアっ。
リジー、俺がかわりに謝る。すまなかったな」
ユラの言葉にあたしはふるふると顔を横に振る。
あたしは、だって、そのおかげでユラと知り合うことができたから。
かまわないって思える。
あのまま海の底に沈んでいたら、謝るどころですまなかったけどね。
あたしの肩にメリーが乾いた布をかけてくれた。
「リジー様、ご無事でよかったですわ」
「そう簡単に死ぬような奴じゃないだろ」
メリーのとなりでペイは軽く言ってくれる。
「じゃあ、俺はオリビア連れて帰るから」
ユラは言うだけ言うと、オリビアの手をひいて海の中へと潜っていってしまった。
かけようとした言葉は口の中で消えた。
また会えるよね?
そう言うことも、その答えを聞くこともできなかった。
ただオリビアの声だけが、海の中から聞こえてきていた。
「ちょっとユラぁっ!ミシェル様ぁっ」
そんな声を残して人魚たちは消えていった。
そういえばと思い出す。
ミシェルと占ったあの食堂で、あたしは水難の相が出ているって言われたっけ。
クリスの村での嵐もこの海での出来事も水難なのかも知れない。
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