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オリビアは少しふて腐れたように、頬を膨らませて、尻尾の足をぶらぶらさせて、また顔をあたしのものに変える。
うっ…。それはやめてほしい…。
「ペイ、オリビアと知り合い?」
「魔王倒す旅の時にも、このあたりの海岸で会った。その時にはイヴァンっていう元王子がいたからな」
ペイの言葉にあたしは頷く。
そういえばメリーのお兄さんである勇者様はマーベラスの王子様だったっけ。
「イヴァンっ!思い出しただけでもムカつくっ」
「おまえ、散々フラれてたよな」
ペイは笑い、オリビアは岩をバシバシ叩く。
あたしはその時のことまったく知らないけど、どうやらものすごーくオリビアにとってはひどいフラれ方をしたらしい。
「イヴァンのことはもういいのっ。あんな奴知らないんだからっ。で、王子様は?ここにいるのはわかっているんだから、早く出しなさいよ、ペイ」
「は?俺の持ち物に王子サマなんていな……あ」
ペイはいないと言おうとして気がついたらしい。
あたしもペイの反応にふと気がつく。
そういえば、あたしたちの旅の仲間には王子様が……。
なんて噂をすれば本人はやってくるものだ。
向こうから、メリーとクリスを肩車したミシェルが、こっちに来ていた。
オリビアはミシェルを見ると、何か電波を感じたかのように、ピクッと体を震わせ、じーっとミシェルを見つめた。
……あたしの顔で、そんなふうにミシェルを見るのはやめてもらいたいと思う。
「リジー様、ペイ様、その方はどなたですの?」
メリーはあたしたちのそばまでくると、不思議そうにオリビアを見ながら聞いた。
「人魚姫…らしいよ?」
あたしは答えてあげる。
「へぇ。人魚姫ってリジーの顔と同じなのか。かわいい」
ミシェルは笑顔を見せて、オリビアの頬に触れようと手をのばす。
オリビアはひょいっと身を翻して海の中へと飛び込んでいってしまった。
ちょっとミシェル。
あたしの顔しているからかわいいとかいう意味じゃないよね?
「おまえの女たらしに感づいたんじゃね?」
ペイは笑いながらミシェルに言う。
「女たらしじゃないって。今はリジーだけだって言ってるだろ。そういうペイはリジーのことどう思っているんだよ?いつもはぐらかしやがって」
ミシェルはペイに聞き、あたしは少しドキッとして、ペイを見る。
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