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ペイは軽く鼻の頭を指先でかいて、ミシェルの言葉にすぐには答えてくれなかった。
あたしも聞きたいことなのに…。
そう。よく考えてみれば、あたしを城から連れ出したペイは下手をすれば牢に捕われていたかもしれない。
あたしが例えそれを望んでいたとしても、お父様とお母様がもっと厳しい人だったなら、理解をしてくれなかったら…。
そんな危険を冒してくれたのは、なぜ?
あたしにキスしようとしてくれたこともあった。
それは愛情?
ペイの返事を待つあたしとミシェルをよそに、メリーはいきなり歓喜の悲鳴をあげた。
「きゃあぁっ。デリフィッシュにパタパタっ。こっちはトムフィッシュですわっ。こんなにたくさんの新鮮なお魚がいただけるなんて…」
相変わらずのメリーのマイペースさに、あたしは苦笑いをして、ペイの答えを待つのをやめることにした。
だって…、その答えは決していいものとは限らない。
聞くのは本当は少しこわいから。
あたしはペイとミシェルのそばを離れて、メリーのいるバケツのそばへといった。
「メリーは魚が好きなの?」
「もちろんですわ。マーベラスは海に面した国ですもの。幼い頃はよくいただいておりました。リジー様、腕によりをかけて料理しますから、楽しみにしていてくださいませ」
メリーは満面の笑みを見せて言い、あたしもつられて笑顔になる。
メリーの作ってくれる魚料理が少し楽しみになってきた。
日が傾き始め、空が夕焼けに染まる頃、メリーたちが野宿の場所へと向かうその背中をあたしは眺めて、少し遅れてその後を追いかけようと歩き出した。
「ちょっとっ、ねぇっ」
ふいに背後から声をかけられて振り返ると、海からひょこっとオリビアが顔をのぞかせていた。
「ねぇ、リジー。あの王子様は独身よねっ?」
オリビアの突然の質問にあたしは頭を回転させた。
オリビアのいう王子様は、たぶんミシェルのことだろう。
あたしは迷いながら頷いてみせる。
だって…、でも…、ミシェルはあたしのこと好きでいてくれているから…。
なんとも言い難い。
「そうよね。イヴァンとは違って優しそうだし、顔もスタイルも文句なしだし…♪ねぇ、リジー、少し手を貸して」
オリビアはあたしにその手をのばしてきて、あたしはオリビアの手を握って陸へ引き上げてあげようとした…のはまちがいだった。
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