人魚姫

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オリビアの手にふれた瞬間、目の前が暗くなって、頭がふらついて。 次に気がついたときには、あたしはなぜか海の中にいた。 そして目の前にはあたしっ!? 違う。あたしの姿をしたオリビアだ。 「ふふっ。リジー、馬鹿ね。もう少し警戒しないとダメじゃない。こんなに簡単に騙されてくれるなんて思ってもみなかったわ」 あたしの姿をしたオリビアは、そうあたしに語りかける。 「これは…魔法…?」 「そうよ。あたしがかけてあげたの。リジー、あなたはゆっくり海の中で楽しむといいわ」 オリビアは言って、みんなのところへ歩き出そうとした。 待って…。あたしの姿をしたオリビアはミシェルを狙っているのよねっ? なんか…勘違いされちゃいそうなんですけどっ? 「ちょっとオリビアっ。ダメだってばっ」 あたしの制止した声が届いているのかいないのか、あたしの姿をしたオリビアは振り返ることもせずに、軽い足取りでいってしまった。 あたしは海に一人取り残されてしまう。 陸へと上がろうとして、その足が魚のそれであることに気がつく。 うぅっ…。 下手に陸なんかにあがったら…、ピチピチと暴れるだけしかできなくなりそう…。 だからって、ここから離れるのもなんだか…。 あたしはどうするべきか悩んで、そこに佇んでいた。 海中では魚の尻尾が無意識にゆらゆらして、あたしを直立状態にしていてくれる。 あたしがこの状態に深い溜息をついていると、海の向こうから、何かがバシャバシャと飛沫をたてて、こっちに近づいてきていることに気がついた。 そしてそのすぐ後、あたしのすぐそばに、ザバッと大きな音をたてて男が顔を出した。 「オリビアっ!またこんな人里の近くにきてっ。人間に捕まってしまったらどうするつもりなんだっ?」 その男はあたしに向かって真剣な顔を見せて怒る。 えっ?えっ?誰っ? 「帰るぞ」 その男はあたしが戸惑っていることに溜息をついて、あたしの手を引いて海中へと潜っていく。 「ええっ?ちょっ、あたし、息できな…っ…」 無理矢理、海の中へと引きずり込まれたあたしは、息ができないと思ってもがいたけど、この体はオリビアのもの。 あたしの耳の後ろあたりがピクピクッと動いて、呼吸は苦しくなんかなかった。 エラ呼吸……。 ついでに体が泳ぎも覚えていた。
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