160人が本棚に入れています
本棚に追加
オリビアの手にふれた瞬間、目の前が暗くなって、頭がふらついて。
次に気がついたときには、あたしはなぜか海の中にいた。
そして目の前にはあたしっ!?
違う。あたしの姿をしたオリビアだ。
「ふふっ。リジー、馬鹿ね。もう少し警戒しないとダメじゃない。こんなに簡単に騙されてくれるなんて思ってもみなかったわ」
あたしの姿をしたオリビアは、そうあたしに語りかける。
「これは…魔法…?」
「そうよ。あたしがかけてあげたの。リジー、あなたはゆっくり海の中で楽しむといいわ」
オリビアは言って、みんなのところへ歩き出そうとした。
待って…。あたしの姿をしたオリビアはミシェルを狙っているのよねっ?
なんか…勘違いされちゃいそうなんですけどっ?
「ちょっとオリビアっ。ダメだってばっ」
あたしの制止した声が届いているのかいないのか、あたしの姿をしたオリビアは振り返ることもせずに、軽い足取りでいってしまった。
あたしは海に一人取り残されてしまう。
陸へと上がろうとして、その足が魚のそれであることに気がつく。
うぅっ…。
下手に陸なんかにあがったら…、ピチピチと暴れるだけしかできなくなりそう…。
だからって、ここから離れるのもなんだか…。
あたしはどうするべきか悩んで、そこに佇んでいた。
海中では魚の尻尾が無意識にゆらゆらして、あたしを直立状態にしていてくれる。
あたしがこの状態に深い溜息をついていると、海の向こうから、何かがバシャバシャと飛沫をたてて、こっちに近づいてきていることに気がついた。
そしてそのすぐ後、あたしのすぐそばに、ザバッと大きな音をたてて男が顔を出した。
「オリビアっ!またこんな人里の近くにきてっ。人間に捕まってしまったらどうするつもりなんだっ?」
その男はあたしに向かって真剣な顔を見せて怒る。
えっ?えっ?誰っ?
「帰るぞ」
その男はあたしが戸惑っていることに溜息をついて、あたしの手を引いて海中へと潜っていく。
「ええっ?ちょっ、あたし、息できな…っ…」
無理矢理、海の中へと引きずり込まれたあたしは、息ができないと思ってもがいたけど、この体はオリビアのもの。
あたしの耳の後ろあたりがピクピクッと動いて、呼吸は苦しくなんかなかった。
エラ呼吸……。
ついでに体が泳ぎも覚えていた。
最初のコメントを投稿しよう!