160人が本棚に入れています
本棚に追加
エリザベェータ様はシシルの女神様で。
ジャンは…確かリックが言っていた。
魔王の名前だと。
頭が混乱するばかりでついていけない。
あたしにはお父様とお母様がいる。
なのに、なぜ女神様と魔王の娘なんて話になるんだろう?
「……今は何もわからないだろうから、お城で答えを求めて。…だって。
ごめんなさい、リジーさん。あたし、やっぱり空耳なのかな?」
ミリィもわからないとでも言うように言ったけど、エスナはミリィを見て、その頭を横に振る。
エスナは頷くこと、否定することはできる。
あたしの言葉に、答えてくれる。
あたしの話をわかってくれている。
「……エスナ、魔王はあたしのお父様なの?」
あたしが聞くと、エスナは肯定も否定もしなかった。
その目はまっすぐにあたしを見る。
あたしに城で答えを求めろと言っている。
あなたは…何者なの?エスナ。
あたしたちの旅は、また城へ向けての旅となる。
厳しい寒さと、厳しい道なき急な山道。
登って下りてを繰り返す。
ミリィの村の人たちも近づかない、古くからある城。
そこに向かっている。
あたしの目の前、ペイがファームへと手を差し出す。
ミシェルがメリーを抱き上げる。
頭も心も体も。
変わらず、バラバラ。
ミシェルはメリーを引き上げたあと、レイに手を差し出して。
クリスはエスナの魔法の力を借りて。
あたしの目の前、差し出された手はペイのもの。
あたしがその手に手を重ねると、あたしの体を力強く引き上げる。
「よっ、と…。あー、もうっ。ゲルとダンっ、あいつらがいないせいで男二人しかいねぇしっ。必要以上にくたびれるっつぅのっ」
ペイには珍しく肩で息をつきながら、その場で少し休憩をする。
「ゲル?ダン?」
「前の旅の仲間。ミリィの村で聞いた話だと、あいつらも魔王の話を聞いて、二人で先に城に向かったらしい。一応、村から合図出したから、この先、もう少しで追いつくはずなんだけどな」
ペイはそこまで言うと、ぐっと大きく体を伸ばして、あたしの頭にぽんっとその手を乗せて。
「いくぞ。あと少し」
そう言葉をかけて、あたしの前を歩き出す。
あたしはしばらくその背中を眺めて、俯きがちに歩き出す。
あの言葉、もう一度、聞きたい。
好きだ。
空耳…だったのかな?
最初のコメントを投稿しよう!