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道は険しい。
本当に城に向かっているのかと疑うほどに。
心は苦しい。
ペイがファームの手をひくたびに。
ペイの様子が以前と何か変わったわけでもない。
それでも…、野宿の夜、あたしは余計なものをまた見てしまうのだ。
ペイとファームが二人きりで離れている姿を。
声をかけることもできず、木の幹にもたれて俯くだけのあたしがいる。
ミシェルがいるじゃないかと思えば、ミシェルもメリーとばかり話すことが多くなっていて。
ゲルとダンという、勇者ご一行様がすべて揃ったときには、あたしは倒れた。
心と体と頭がバラバラ。
城に答えを求めにいかなきゃいけなくて。
魔王の心臓を短剣で貫かなければいけなくて。
ペイは…ミシェルは…メリーは…。
あたしは誰にも何も話せない。
目を開けると、あたしの額には濡れたタオルが当てられていて。
あたしのそばにはレイとクリスがいた。
ペイもミシェルもメリーも…いない。
「気がつかれましたか?リジーさん」
「リジーお姉ちゃん、寒い?震えてるよ」
レイとクリスはあたしに声をかけてくれて、クリスはあたしに抱きついて、あたしを暖めようとしてきて。
大丈夫。
心配かけないようにそう声をかけようとしたのに、あたしの声は出なかった。
喉に手を当てて、もう一度声を出そうとして。
なんの音もあたしの唇からこぼれなかった。
無理に声を出そうとすれば掠れた息がこぼれる。
喉に手を当てて回復魔法をかけてみても、あたしの声は出なかった。
「…リジーお姉ちゃん?…喉…、声が出ないの?」
あたしはクリスの言葉に頷いて。
あたしよりもクリスが悲しそうな顔を見せてしまって。
あたしはまた大丈夫とクリスに唇を動かして伝える。
「大丈夫じゃないよっ!リジーお姉ちゃん、苦しい?痛い?」
「リジーさん?本当に声が出なくなってしまわれたのですか?魔法で癒せないのなら、何か薬をご用意します」
あたしは大丈夫だって言いたいのに、何も言えなくて。
クリスとレイの様子に気がついたみんなもあたしを気にかけ始めた。
…あぁ。あたし、すごいお荷物だ。
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