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荷物になりたくて、あたしは城から出たわけじゃない。
旅の途中、いろんなことがあって、たくさんの目的ができたけれど。
あれもこれもしなきゃいけないと思うけれど。
ここまで歩いてきたのは…。
「リジー様、お顔の色が優れませんわ。もう少しお休みになったほうがよろしいのではないでしょうか?」
「リジー、無理はするな。ここからミリィの村まで引き返すか?」
メリーとミシェルの声に耳を塞ぎたくなる。
「やめてっ!メリーお姉ちゃんもミシェルお兄ちゃんも、ペイお兄ちゃんもファームお姉ちゃんもリジーお姉ちゃんに近づかないでっ!」
クリスは叫ぶように声をあげて、あたしの体に抱きつく。
「クリス?」
ペイは不思議そうにクリスの名前を呼び、クリスはペイを振り返る。
「リジーお姉ちゃんは僕が守るから。今は放っておいて」
あたしの心がクリスに読まれてしまっている気がした。
だってクリスは…そういう子だ。
あたしが何も言わなくても、何も言えなくても…。
あたしはクリスに今、守られてしまってる。
あたしはクリスの小さな体をぎゅっと抱きしめる。
「クリス、あんたみたいな小さな子供がなにかっこいいこと言ってくれちゃってるのよ。それより今はリジーの声を…」
ファームが近づこうとして、クリスはその手の平をファームの足元へ向けた。
その場にあった雑草が伸びて、ファームの足を捕まえて止めた。
「…僕にだってできるよ。いつも守られてばかりじゃない。魔法で対決してみる?ファームお姉ちゃん」
クリスは本気で。
次は攻撃するとばかりに言って。
ファームは何も言えずに後ずさる。
クリスの魔法は魔王のもの。
クリスが本気を出せば、ここにいるファームやメリーも相手にならないだろう。
あたしは小さな子供に守られてしまっている。
あたしの心を傷つける人たちから。
泣かないようにするのが精一杯だった。
みんながいたから…あたしは歩けた。
信じられるものがあったから…歩いてこれた。
信じて…いたいのに。
信じて…いられなくなった。
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