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破片と土埃の煙幕のようなものの中から、ペイに向かって降り下ろされる剣。
ペイはそれに気がついたかのように、振り返り様にその剣を自分の剣で受け止める。
大きな金属同士がぶつかる音が響いた。
「そこの女を礼がわりに真っ先に殺してやろうとしたのに…。邪魔をするな」
「なんの礼だ?」
ペイが問うと、男は口許に笑みをのせて、ペイへと何度も剣を降り下ろしていく。
ペイはそれを両手で握り直した剣で受け止め、かわす。
「俺の新たな器と魔力をここまで運んだ礼をな」
その男の言葉にあたしはクリスを思い、剣を手にして鞘から引き抜き、ペイの脇から男に向かって剣を振る。
あたしの剣先は男の頬に細い傷をつけた。
男の頬から流れ出る赤い血液。
クリスは…クリスの意思を持って生きていた。
魔王を復活させるために生きていたわけじゃないっ!
ミシェルがダンが男の背中に向かって剣を振り、男は高く飛び上がって避ける。
囲まれても掠りもしない。素早い。
ゲルが男の背後から足を振り上げ、男はゲルの足をかわすと、ゲルに長い足を振り上げた。
ゲルの体は浮き上がり、強く体を壁に叩きつけられる。
「…以前より…強い」
「魔物がまわりにいないだけ楽だ。
リジー、おまえはさがってろ。狙われているのはおまえだ」
ペイはダンに言葉を返すとあたしに声をかける。
男の視線があたしを捉え、その手があたしに向けられる。
本当にそうみたいね。
あたしが…その男を本当に蘇ることなく消せるから…。
でも、近づけない。
短剣で男の胸を貫く前に、近づけば一瞬で殺されるかもしれない。
そう思うほどの肌に感じる恐怖を与える、今のあの男には近づけない。
メリーの風が、ファームの炎が男を襲う。
メリーの風に煽られて燃え広がる炎。
男を焼くこともなく。
男はかかってきたダンに剣を振り上げる。
どうすればいい?
悩む間にも男の唱えた魔法であたしたちは弾き飛ばされて、あたしは地面に体を打ち付ける。
男はすぐにあたしのそばにきて、留めのようにあたしの真上から剣を突き刺そうと構え。
近くに飛ばされたミシェルの手が男の剣を掴んだ。
「魔王だかなんだか知らないけど…な、そう簡単にやらせるかよっ!」
ミシェルは声をあげて、男を強く睨み、男の体をあたしから引き離す。
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