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魔王が笑ってる。
その手はあたしの髪を撫でて、優しくあたしを見つめる。
『お前には俺とエリザベェータの加護がある。お前の望む未来をお前に与えよう。エリザベス』
魔王の加護って…とも思ったりする。
あたしをボロボロに傷つけてくれたくせに…優しい。
本当の彼は…こういう人だったのかもしれない。
『エリザベス。愛しい娘。あなたの幸せを祈っております』
エリザベェータ様はあたしの体を包むように抱いて。
あたしはその心地よさに目を閉じる。
お母様…。
温もりが消えて。
目を開けると、そこにエリザベェータ様とジャンの姿はなくて。
膝の上にあったエスナの体が透明な光る羽となって、舞い上がり、消えていった。
夢のように。
何もなかったかのように。
あたしたちはまたミリィの住む村へと向かって山を歩く。
見つけた温泉で久しぶりに湯浴びをして、冷えた体を温める。
もちろん、女ばかり。
男は近づけないように、レイが結界まで張っている。
「しっかし、こう簡単にアタシの魔法が破られちゃうとはね…。さすが女神様」
「まさかファーム様がペイ様にそのような魔法をかけていらしたとは、わたしも気がつきませんでしたわ」
「アタシだって、ミシェルにメリーが同じような魔法を使っていたなんて気がつかなかったってば。お姫様のリジーには王子様がいいんじゃないって思って、昔のことも思い出して、ペイをもらってあげたつもりだったのに」
「リジー様が旅に出ることになったのはペイ様がいらしたからです。ミシェル様がいらっしゃらなければと、わたしもミシェル様を…」
なんていうことが、あたしの心を苦しめてくれた原因らしい。
魔女どもめがっ!
あたしはファームとメリーを不機嫌に睨む。
「ごめんごめんっ。ほら、さすが女神様。同じ手の魔法がペイにかからないようにもしてくれちゃったんだし、睨まないでよ。リジー」
ファームはあたしのご機嫌をとるように、あたしに抱きついてきて。
「それってまた魔法をかけようとしたってことじゃないのっ?」
言ってやると、ファームは舌を出して、あたしから顔を逸らす。
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