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「それにしてもマーベラスの神、軍神といわれるジャン・ディアス・マーベラスが実在して、魔王となり祖国を滅ぼしたのも…夢のようなお話ですね。リジーさんがエリザベェータ様のお子だったというのは、わたしの思ったとおりでとてもうれしく思いますが」
レイは一人、のんびりとお湯を体にかけながら呟く。
「8人全員で同じ夢を見ていたなんて、とても言えないけどね。
軍神よりは魔王のほうが有名よね。ジャンを軍神とわかるのは、アタシとメリーみたいなマーベラスを祖国とする者か、レイみたいな修道女くらいだろうし。
あぁ。でもやっぱりジャンは小さい頃に見たまま、イヴァンに似てる男前だったっていうことだね」
ファームはあたしから離れて温泉の中で手足を伸ばす。
「お兄様は小さな頃から、ジャン様の生まれ変わりだと言われ、期待を一身に背負っていらっしゃいました。魔王がジャン様だったと知れば、お兄様は落ち込まれるかも知れませんね」
メリーは溜め息をつくように息を吐く。
「勇者様はそんなにジャンに似てるの?」
この中で一人、あたしだけが知らない、勇者様のお顔。
聞いてみると、3人は揃って頷いた。
「王家といっていたし、血縁ではあるんだろうけど、もうそのままって感じ。魔力も光と闇の違いはあっても、同格いきそう。でもねぇ…」
「イヴァンさんですものね…」
「お、お兄様はとても素敵な方ですっ」
ファームとレイの言葉にフォローするようにメリーが声をあげる。
そういえばと思い出す。
旅を始めた頃に、メリーとペイが勇者様のことを話していた。
とっても変な人だという印象をあたしに与えてくれた。
「イヴァンの無謀さは魔王の素質ありだからなのか…。性格もジャンに似ていると言えば、似ているのかも」
「いずれはジャン様のように崇められるのでしょうね。リジーさんが勇者様と呼ばれているくらいですから。……勇者様…なんですよね…」
ファームとレイはメリーとあたしから顔を逸らす。
勇者様はペイ以外にも、なんとも言えない存在だったらしい。
ジャンも…、あの思念やそれ以外の顔を思い出すと、なんとも言えない存在だ。
「お兄様はとても優しい方ですってばっ!」
メリーが一人、懸命にかばっていた。
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