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「リジー、手を」
ミシェルがあたしに手を差しのべてくれて、あたしはその手を借りて。
と、そこに邪魔をするようにペイがミシェルの背中へと乗りかかった。
「もう頭痛はおさまったのか?王子サマよ」
「まだあるけどっ。なんだよっ。ペイだって魔法にかけられていたくせにっ」
「喚くなよっ。頭に響くだろっ。…二日酔いを何日も引きずってる気がする…。気持ちわる…」
ペイは口許を押さえて、ミシェルもペイにつられたように青い顔を見せて。
なんだかんだいっても、ペイとミシェルはいつも仲良く同じ状態に陥ってると思う。
それがまわりにされたことだとしても。
「ペイもミシェルもファームやメリーにいってもいいのに」
あたしは言ってやる。
もうだいぶ開き直れたとも思う。
「だからっ、それは魔法にかけられていたからだってっ。…記憶あるぶん、双子姫のサラとレイラにかけられたものより…、性質悪いけど」
ミシェルはペイを背負ったまま、頭に手を当てる。
「…まったく同じものかけられていたのか?…俺も記憶ある。けど…そう。まったく自由に動けないわけでもない」
「わかる。言いたくはないけど…、これって魅了の魔法じゃないよな」
「主従だな。ファームの得意な魔法だ。以前は魔物を従えさせていたけど、人間にかけやがったか…」
なんて男二人は言い合ってる。
「それでミシェルはメリーとキスして?ペイはファームといちゃついて?」
あたしはムッとして、見ていたことを暴露してやった。
「…不可抗力」
「そこ責めるなよっ。だから言ってやっただろっ。…って、頭いてぇ…っ」
ペイは頭を抱えて、あたしは二人を置いて、先を歩く。
魅了…されていたほうがよかったかもしれない。
言い訳をしようとしてくれるから…、うれしくて悔しい。
ねぇ…?
あたしのこと…好き?
あたしはクリスに追いついて、クリスはその顔をあげてあたしに笑顔をくれる。
クリスの顔にそばかすはなくて、足も悪くなくて。
それが本当のクリスの姿なのだろう。
クリスの腕にはエスナの姿はなくて、あたしのそばにもエスナはいなくて。
あれは夢ではなかったのだと思う。
あたしは空を見上げて、ジャンとエリザベェータ様の姿をそこに浮かべて。
どこかであたしを見守ってくれているような気がして。
お父様、お母様…。
もう会えないかもしれないけど…、あなた方もあたしの…両親。
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