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「じゃあ、俺はいくから」
あたしをこのオリビアの部屋に案内してくれたユラはそう言うと、そのままどこかへいってしまおうとした。
「ちょっと待ってってばっ」
あたしは慌ててユラを引き止めるように、腕をのばして、ユラの尻尾を掴んだ。
ユラはあたしを睨むように振り返る。
どうやら尻尾はあまり掴まれたくないところだったみたい。
「ねぇ、ユラ。あなたとオリビアってどういう関係なの?オリビアは人魚姫なんでしょ?」
あたしが聞くと、ユラは溜息をつくように、けれどあたしの話し相手になってくれるとでもいうように、オリビアの部屋の中へ入り、その窓となっている場所に座る。
あたしもオリビアの部屋の中に入って、そんなユラを視線で追いかけて。
「俺とオリビアは義理の兄妹っていうところだ。オリビアは人魚の女王と海神の間に生まれた娘。俺は海神の血をひいてはいるけど、母親は海神の侍女だったっていう話だ」
あたしはユラの言葉にふむふむと頷く。
だからユラとオリビアの鱗の色は同じなんだ?
キラキラと銀色に輝く鱗。
他の人魚を見るまで、人魚の鱗はみんなこんなふうにきれいなのかと思ったけど、少し違うみたい。
「聞きたいことはそれだけか?一人にされたくなかったみたいだから戻ってやったが」
「うーんと…。ユラは人魚の王子様なの?」
あたしはユラがどこかにいってしまわないように質問を探して聞いてみた。
「少し違うな。俺は海神の跡取りであって、人魚の王にはならない。人魚の女王にはオリビアがなるだろう」
「海神って海の神様のこと?」
「そうだ。この広い海のすべてを統べる者。それが海神ってやつだ。
もう質問はいいだろ?そろそろ眠ればいい」
「そう言われても…」
人魚はどうやって眠るの?
なんだか眠っている間にどこかに流されていきそうな気が…。
そんなふうにあたしが思っていると、ユラはあたしのそばに泳いできて、あたしをその広い胸の中に包む。
えっ?えっ?
あたしは赤面して、どうすればいいかわからなくて固まってしまった。
「こうしていれば眠れるだろう?目を閉じて俺の鼓動を聴いておけばいい」
いや、あのっ、ユラ?
これはちょっと…なんていうか…ドキドキして逆に眠れないような…。
だってあたし、こんなふうに抱きしめられたことなんて…。
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