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ミリィの住む村から更に東へ。
当初の目的地であった、天へと届くと言われている塔へ、あたしたちは向かっている。
回り道をしたこともあって、勇者様は逆に塔の前で待っていそうだ。
山を抜けると街道があって、やっとまともな道を歩いている。
まともとは言っても、誰かが頻繁に通うこともない、荒れた街道だけど。
斜面ばかりを歩いていたのに比べれば、随分とまともだ。
魔王も倒せたし、当初の目的だけとなって、みんなの顔も明るい。
ミシェルの肩にクリスを乗せるペイ。
レイに遠慮されながらも、抱き上げて運ぶゲル。
ダンにゲルのように抱き上げて運んでとねだるファーム。
その風景すべてが微笑ましく思いながら、あたしはメリーと並んで歩く。
魔王を倒して、世界を平和へと導いたご一行様と一緒に行動しているわけだけど、みんなそんな大きなことをしたとは思ってもいないみたい。
「復活した魔王を最終的に倒されたのはリジー様ですから、リジー様も勇者様となるのでしょうか?」
不意に思い出したようにメリーが聞いて、あたしはとんでもないと思う。
「やめてよ、メリー。ミリィの村ではそういう話になっていた感じだけど、…お父様…、魔王の馬鹿は復活してすぐに倒されて、復活したことを知っているのはここにいる人たちだけ。あたしは確かに魔王を倒したことになるかもしれないけど、勇者なんてものじゃない。親殺しかもしれない」
「ですが、リジー様でなければ、魔王がまた復活するのを止められなかったのでしょう?お兄様よりリジー様のほうがわたしには勇者のように思えます。親…かもしれませんが、すべてはそういう因果。リジー様が親殺しをされたとは、ここにいる誰もが思ってもおりません」
メリーの言いたいことはよくわかる。
だろうなと納得するところもある。
「でもあたしは勇者だなんて呼ばれたくない」
「お兄様もそうでしょうね。お兄様はただ、魔王の首をとりたかっただけでしょうから」
「…世界を平和に…とかではなく?」
「それも最終的には思われていそうですが、お兄様の目的は魔王の首をとることだけです」
「…単純すぎない?」
「……そういうお方なのです」
メリーは言いたくないとでも言うように言って、溜め息をついた。
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