旅の目的地

2/11
前へ
/96ページ
次へ
ミリィの住む村から更に東へ。 当初の目的地であった、天へと届くと言われている塔へ、あたしたちは向かっている。 回り道をしたこともあって、勇者様は逆に塔の前で待っていそうだ。 山を抜けると街道があって、やっとまともな道を歩いている。 まともとは言っても、誰かが頻繁に通うこともない、荒れた街道だけど。 斜面ばかりを歩いていたのに比べれば、随分とまともだ。 魔王も倒せたし、当初の目的だけとなって、みんなの顔も明るい。 ミシェルの肩にクリスを乗せるペイ。 レイに遠慮されながらも、抱き上げて運ぶゲル。 ダンにゲルのように抱き上げて運んでとねだるファーム。 その風景すべてが微笑ましく思いながら、あたしはメリーと並んで歩く。 魔王を倒して、世界を平和へと導いたご一行様と一緒に行動しているわけだけど、みんなそんな大きなことをしたとは思ってもいないみたい。 「復活した魔王を最終的に倒されたのはリジー様ですから、リジー様も勇者様となるのでしょうか?」 不意に思い出したようにメリーが聞いて、あたしはとんでもないと思う。 「やめてよ、メリー。ミリィの村ではそういう話になっていた感じだけど、…お父様…、魔王の馬鹿は復活してすぐに倒されて、復活したことを知っているのはここにいる人たちだけ。あたしは確かに魔王を倒したことになるかもしれないけど、勇者なんてものじゃない。親殺しかもしれない」 「ですが、リジー様でなければ、魔王がまた復活するのを止められなかったのでしょう?お兄様よりリジー様のほうがわたしには勇者のように思えます。親…かもしれませんが、すべてはそういう因果。リジー様が親殺しをされたとは、ここにいる誰もが思ってもおりません」 メリーの言いたいことはよくわかる。 だろうなと納得するところもある。 「でもあたしは勇者だなんて呼ばれたくない」 「お兄様もそうでしょうね。お兄様はただ、魔王の首をとりたかっただけでしょうから」 「…世界を平和に…とかではなく?」 「それも最終的には思われていそうですが、お兄様の目的は魔王の首をとることだけです」 「…単純すぎない?」 「……そういうお方なのです」 メリーは言いたくないとでも言うように言って、溜め息をついた。
/96ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加