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「ですから、お兄様っ!少し離れてくださいませっ!」
メリーはキレたように声をあげ、メリーの魔法でメリーにくっついていた人は空へと飛ばされる。
なんとも…感動的とは言えない再会のようだ。
勇者様は空中で風にのったように身を翻し、ふわふわと浮いたままメリーのそばに戻ってきた。
その顔は…魔王っ?
本当にジャンそのものだった。
「つれないな、メリー。兄ちゃんがこんなにおまえに会いたがっていたっていうのに」
「少しは落ち着いてくださいませ、お兄様。お仲間の皆様の前です」
「俺のシスコンぶりはあいつらはわかりきっている。気にするな。
それよりメリー、おまえに渡すはずだった魔王の首、あの塔のてっぺんに置きにいかされてさぁ。塔の中でメリーへの土産になりそうなもの探したら、もうなんの骨かもわからないような骨しかなくてさぁ」
「いりませんから」
「…めずらしそうな骨、拾ってきたのに?」
「いりませんっ!」
「骨…」
しょんぼりと勇者様は俯いて、その顔をあげてあたしを見て。
あたしにメリーにあげるはずだったらしい、きらきら光る大腿骨のようなものを差し出してきた。
確かにめずらしいけど…骨だ。
いらない…。
とても言えない。
そんな淋しそうな顔をされたら、とても言えない。
確かにものすごく変な人。
純粋なのだろうけど。
「ありがとう…ございます」
あたしは骨を受け取って、見た目よりも重すぎるその重みに腕が下がる。
ずっしりどころじゃない。
「お兄様っ!リジー様に渡す最初のプレゼントが骨って、お兄様がリジー様の婿候補になれるようには、まったくもって思えないのですがっ」
「え?なにそれ?リジーってこの子?いい子だな」
勇者様はにこにことうれしそうにあたしの頭を撫でる。
ジャンと同じ顔…なのだけど。
あたしは手の中のバーベルのような骨を持っているのが精一杯で。
どうにも反応しようがない。
そのうち、さて移動しようということになって、それでもあたしは勇者様のお土産を持ったまま動くこともできず。
「リジー、行くぞ」
ペイに声をかけられて、そのままへたばった。
……勇者様はとても変な人でした。
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