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なんていう噂をすればなんとやら。
「リジー、ここにいたのか」
なんて、あたしに声をかけてくる勇者様。
オリビアはもしかして、勇者様とミシェルの王子様電波を感じ取って現れたのかもしれない。
「勇者様はオリビアを知ってますよね?」
「勇者様って呼ばないで欲しい。メリーの友達だし敬語もいらない。
オリビアは知ってるけど?顔を変えて相手を威嚇する人魚姫だろ?おもしろいよな」
勇者様と呼ばないで欲しいと言われたのは何度目だろう?
あたしにとっては勇者様なんだけど。
あたしも勇者様とは呼ばれたくないし、イヴァンって呼ぶかな…。
「イヴァンはオリビアを振りまくっていたんでしょ?」
「振る?そういうつもりは別にないけど。俺には魔王を倒す目的があっただけ。次は魔王に滅ぼされたマーベラスを復興させてみようかな」
イヴァンはあっさりと言い切ってくれて、なんだかオリビアがかわいそうにも思えてくる。
振ったつもりもないのが余計になんだかかわいそう。
「魔王は…イヴァンにそっくりだったでしょ?倒すことや、その首をとることに抵抗はなかったの?」
「マーベラスの復興に興味を持ってくれたほうがいいのに。
……自分の中の黒いものと戦っているみたいで、とった首は自分の首みたいで…、これは俺なのかって思ったりもしたかな。もしくは俺は魔王の息子なのかとか」
「あたしは魔王の娘らしいよ?」
言ってみると、イヴァンはおもしろそうに笑った。
確かにとても信じられる話でもないだろう。
あたしだって…、あの時間がすべて夢のようで…。
だけど、イヴァンの顔を見ると、あの魔王の顔が浮かんで。
エリザベェータ様を、エスナを思い出して。
ジャンが笑ってあたしの頭にふれた優しい手を思い出す。
「リジーには、じゃあ、俺は父親に見えたりして?これでもペイと同い年なのに。塔に登っている間に老けたかな」
「魔王が若く見えるだけだと思う。イヴァンは…イヴァンだよ。魔王にそっくりではあるけど、やっぱりちょっと違う」
「魔王の顔が世界中に知れ渡っていたら、今頃、俺どうなっていたかと思ったりするけどな。勇者様と呼ばれるどころか、絶対に石投げられて虐められてる。
じゃなくても…、……同じ顔した奴殺して、勇者だなんて気取れるはずもない」
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