160人が本棚に入れています
本棚に追加
「…なんでセレティが出てくるんだよ?」
「メリーが風のスクリーン出したとき、ペイの会いたい人はセレティさんばかりだったじゃない」
旅の中で、メリーは何度かスクリーンを出してくれていた。
会いたい人に会わせてくれるその魔法で、ペイはいつもセレティさんと話していた。
それでも…言ってくれたから。
「セレティは俺が魔王の城から盗んだ。一人で城に偵察にいったとき、半獣にされて気が狂った奴らばかりの中で、セレティだけが正気で震えて怯えてた。俺が責任を持つからってことで、シシルに連れて帰った。国に掛け合って、半獣であるセレティの市民権もらって、酒場の仕事につけるようにしたのも俺だ。今では町の人間もセレティに普通に接してくれているけど、最初はとてもそんな和やかなものでもなかった。
だから…、セレティとの仲を疑われるのもわかるけど、あいつを気にかけるのは、あいつを生かした俺の責任。あのまま魔王の城に放っておいてもよかったのに、連れ出した俺の責任。その責任を負うなと言うなら、俺はおまえを求めない」
ペイは強い意思であたしに言い切ってくれて。
セレティさんにはどんなに張り合っても、本当に勝てないって思った。
もしもセレティさんがペイを…ってなったら、あたしは…。
「まぁ、セレティは酒場のマスターといい関係になったようだし、俺はもう責任を負う必要もない。…ってことで、……っていうようなこと、前も言ったよな?」
聞いた。
それで好きだって言ってくれた。
でも…セレティさんがペイをってなったら、あたしは…。
ペイに置き去りにされてしまいそうな気がして、あたしは何も言えなくなった。
「……俺の生まれ育ちはどう考えても姫サマに釣り合うものはねぇよ。育ての親は兵士に切り捨てられるような悪事ばっかやってきたどうしようもない奴だし、俺自身も罪に問われることもやってきた。シシルに戻れば、魔王征伐の旅のあとにしていたまま、また酒場でゴロツキ相手に喧嘩するだけ。
……おまえにはおまえのやるべきことがある。俺には考えられないくらいの大きなことがな」
ペイはあたしの頭を軽く撫でるようにふれると、後ろから追いついたみんなを振り返って笑う。
…だから、ペイはあたしを…欲しいとは言ってくれない。
最初のコメントを投稿しよう!