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なんて。
あたしがそう思っていたのは少しの間だったみたい。
ユラの言うとおりに目を閉じて、その鼓動を聴いていると、いつの間にかあたしは眠っていたらしい。
光に目を覚ますと、窓から明るい日差しが差し込んでいて、白い城の壁を明るく写しだしていて。
あたしの隣にはユラが眠っていた。
ユラの目を閉じたその無防備な姿はどこかかわいく見えて、ずっと見ていたいような気持ちにかられたあたしは、陸に戻ることも忘れて、ユラを起こすことはなかった。
人魚ってお話で聞いたことはあった。
とてもきれいな顔をしていて、月夜に海で歌うって。
ユラもオリビアも確かにきれいに顔をしていると思う。
あたしがじっとユラの寝顔に見とれていると、ユラは目を覚ましてしまった。
少し残念。
「おはよ」
あたしが声をかけると、ユラは体を起こし、軽く目を擦る。
「おはよう、リジー。オリビアに会いに行くか」
「うん」
あたしはあたしの住む世界に帰らなきゃね。
あたしはユラに連れられるようにして、昨日、あたしがいた場所へと向かう。
ユラと会えなくなるのは少し淋しいと思う。
もう少し一緒にいたかったかなとも思う。
なんて。
あたし、そんなに気が多いほうだったかな?
ペイがいるのに。
ミシェルもいるのに。
だけど…、あのユラの腕の中は本当に寝心地よかったから。
もう少しで到着っていうところで、あたしはいきなり、人間に戻ってしまった。
そう。オリビアの魔法がかけられたときとは違う。
あたしはユラのそばで泳いでいるあたしのまま、人間に戻ってしまったのだ。
いきなり呼吸ができなくなって、さっきまで普通に泳いでいた尻尾がなくなってしまって。
あたしは海の底に沈んでいきそうになった。
そんなあたしに気がついてくれたユラが、あたしの体をその腕に抱き、海面へと連れていってくれる。
もう死ぬかと思った。
意識が遠退くかと思われた時、海面へと顔を出し、あたしはユラにしがみつくようにして、飲んだ水にむせる。
「大丈夫か?リジー」
「けほっ……ごほっ…、な、なんとか…」
生きているみたい。
あたしはむせて言葉に詰まりながらも答え、そんなあたしをユラはしっかりと抱えていてくれた。
遠くの陸のほうから声が聞こえてきた。
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