Princess and Thief

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ミシェルとクリスとディスタリアで別れたあとは、ペイとメリーとイヴァンとあたしでシシルを目指す。 オリビアはイヴァンといい関係になるかと思われたのだけど、今ここにはいない。 それでもまた、ひょっこりとイヴァンの前に現れそうな気がしている。 メリーもミシェルに何かを言うこともなく、そのままさよならをした。 あたしも…国に戻れば、また籠の中かもしれない。 ペイにまた会えなくなるかもしれない。 シシルが近くなるにつれて、あたしはどんどん淋しくなってくる。 旅の始まりは…、エリュシオンとの結婚から逃げたこと。 ペイが…好きで。 ペイが迎えにきてくれたから…あたしは籠から飛び出した。 世間を知らなかったあたしは、たくさんの人と出会って、素敵だなと思える人も他にもできた。 でもね…、あたしの目はいつも最後には、あなたを見ている。 身分が違うのはわかっているけれど、あたしはあなたに惹かれている。 あたしの手をひいてくれたのなら、いくらでもついていくのに。 …ペイはあたしの手をひいてくれないんだ。 シシルの城に着くまでの最後の野宿。 ペイとイヴァンが交代で見張りをするからと、あたしとメリーをゆっくり寝かせてくれる。 明日の昼にはシシルの城にたどり着いているだろう。 メリーはあたしのそばにいることを望んでくれていて。 イヴァンはマーベラス復興を望んでいて、人手を集めてマーベラスに向かうと言っていたか。 ペイは…。 あたしはとても眠れそうになくて、何度も目を閉じては開けてを繰り返す。 薪のはぜる音が聞こえる。 どこか遠くで獣の鳴く声が聞こえる。 静かな夜。 どうしても眠れなくて体を起こして辺りを見ると、ペイが見張りをしていた。 あたしはペイのそばに向かって、その隣に座る。 初めての野宿のときも、こんな感じだった。 「眠れないのか?…まぁ、城はすぐそこだし、帰ってからベッドでゆっくり眠ればいいか」 帰ってから…なんて、言われたくない。 帰りたくない。 ここにいたい。 ペイの隣にいたい。
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