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あたしはペイの肩に寄りかかるように額をぶつける。
ペイの手は軽くあたしの頭を撫でてくれる。
大きくて優しい手。
その手に目を閉じて、あたしはあたしの気持ちをどうしても伝えたくなって。
「……あたしは…ペイが好きだよ」
言った。
声に出したら、なんだか好きが溢れてきて、あたしの手を引っ張ってくれないその手が悔しくて、涙がこぼれた。
「言って。あたしを好きだって」
あたしは顔をあげてペイを見る。
ペイはあたしを見て、あたしの目元にふれて、涙を拭って。
そのままあたしの頬を包むように手を当てて、唇にキスをくれた。
「…好きだよ」
言ってくれたその言葉とキスに、あたしはこの気持ちを諦めきることなんてできるはずもなくて。
ペイの肩の上から背中に腕を回して、その膝に乗りかかるようにして抱きついていってやった。
ぎゅって抱きしめると、見た目よりも大きなその体はあたしの腕に包まれる感じでもなくて。
ペイの腕に包まれた。
…捕まえた。
離さない。
あたしはここにいたい。
あなたのそばにいたい。
この腕の中があたしの居場所。
我が儘かもしれないけれど…、思いきり我が儘をふりかざしてやる。
「……あたしと結婚して。ペイ。あたしがあなたを支えるから、シシルの王になって」
「…って、おいっ!元盗賊が王になんてなれるかよっ」
ペイはあたしの求婚を焦ったように、かわそうとしてくれちゃう。
あたしは少し離れて、ペイのその顔を見る。
「あたしのこと好きって言ったくせに」
「けどなっ、だからってそれは無謀だろっ」
「あたしは国を捨てるつもりはない。シシルの王としてあたしはあなたを選んだ。エリュシオンもミシェルも振ったんだから、文句言わずに選ばれてよっ」
「国か俺かのどっちかにしろよっ。本気で俺が王になれると思っているのかっ?」
あたしはそこをよく考えてみる。
今までの旅の中。
ペイの行動。
ペイはなんだかんだ言いながらも、リーダーだった。
セレティさんへの責任というものも、しっかりしていると思える。
だめだなって思うところがまったくないわけではないけれど、そこはあたしが補えばいい。
民の出なら民のことを考えてくれるだろう。
私欲に走るようにはとても思えない。
…あれ?なに?ものすごくいい王になりそうなんだけど?
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