プロローグ

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  その舞台には二人の役者が揃っていた。お互いの視線は交錯し、緊迫した空気が肌をかすめる。 「一つ聞く。なんで、なんであんたがこんな事……」 悲壮な表情を浮かべ、だが力強く、彼女は問い掛ける。 「……黙っていRO。そこをどけ。お前には関係ない」 表情を変えず、虚ろな瞳を浮かべる彼。乱れた心を必死に押さえこもうと、抑揚をかけずにつぶやく。 「関係ないってなんや! あたしがどんな思いで今まで過ごしてきたか……。何で考えてくれなかったんや。何であたしを置いていったんや?」 彼女は声を張り上げる。彼の心に届くように。 「うるせぇんだYO。お前の事なんか知るか。そこをどけ、殺すぞ」 ぞんざいに放たれた台詞を聞き、彼女は顔を上げる。その目からは、澄んだ雫が垂れていた。自分でも気付かないくらい、それは自然すぎる様だった。 「何言ってんねん? 何でそんな事言うねん。殺すって。だったら何であの時あたしを助けたんや。何で希望なんて抱かせたんや。あたしはあんたにとっての何だったんや」 「なんでもねぇよ。お前を助けたのはただの気まぐれDA。むかついたんだ。あん時のおまえむかついた、それだけだ。そうだ、あの時死に損なったんだからな、今ここで殺しといてや――」 バキィッ!! 台詞が紡ぎ終わる前に、彼女は手を出していた。渾身の一撃が彼の頬をえぐり、遥か後方に吹き飛ばす。 渇いた地面を転がり、彼は全身を打ち付けた。 土煙が大地から生え、天へと昇っていく。 「上等ぉ。やれるもんならやってみろ。殺せるもんなら殺してみろ。……あんたは変わった。昔のあんたやない。目ぇ覚まさせたる。本当のあんたを思い出せ。あたしはあきらめない、退きもしない。正面からあんたを相手したる。あたし以外視界に入れんようにしたる。さぁかかってこい。本気で殺す気で破壊する気でかかってこい。すべて受け止めすべて薙ぎ払いすべてへし折ったる。あんたの根性を叩き直したる」 彼女はその思いのたけを、今まで溜め込んでいた全部を吐き出すように、叫び散らした。 .
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