プロローグ

4/4
1582人が本棚に入れています
本棚に追加
/290ページ
  「そや。それでええ。やるんだったらとことんやったる」 そううそぶくも、彼女の声は震えていた。彼女の視界は歪んでいた。 彼は激痛に喘ぎながら、血に支配を許しながら、駆け出した。 「そうや、かかってこい。全身全霊で受け止めたる。全部! 今まで生きてきた全部を、あんたにぶつけたる!」 彼女も飛び出した。悪魔の羽根をはばたかせ、瞳に覚悟を宿し。 二人はぶつかり合った。 彼女はただ泣いていた。 彼はただあがいていた。 そんな二人は激突する。 殺し合う。 確かめ合う。 認め合う。 彼と彼女は愛し合っていた。 彼と彼女は依存していた。 彼と彼女はいつでも一緒に在った。 だからこその反発。 だからこそのいがみ合い。 これは彼と彼女が起こした、最初で最後の激突だった。 .
/290ページ

最初のコメントを投稿しよう!