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朝起きて、公園の水呑場で顔を洗った。
よし、今日こそ!
昨日買った求人を見て、朝から面接に行った。
昨日と同じく5ヶ所も…
またしても全滅…
《やっぱり、住所がはっきりしていないのは痛いよな…》
少しの間、何も考えず、ぶらぶらしていた。
何も考えたくなかった。
道も知らない場所。
宛もなく、ただ歩いていた。
気付くと長い並木道に着いていた。
《へぇ、都会にもこんな場所があるんだ》
木枯らしが舞い、少し冷たい風達が肌を撫でる。
何でもない並木道、
木々の隙間からもれる日差し、
普段は気にもとめない景色が、
酷く美しい景色に思えた。
♪♪~♪~♪~♪♪~♪♪~♪♪~~~♪♪♪
《えっ…?》
並木道の少し先…
何だ?
そこには人だかりが出来ていた。
路上ライブだ。
凄いな、初めて見た。
バンドのメンバーは女性4人。
聴いた事のない曲だな、オリジナルかな?
いい曲だな。
時間が過ぎていくのも忘れ聴いていた…
切ないバラード…
気付くと曲が終わり、少し寂しい気分になった。
もう終わりか…
『そこの君!』
ボーカルの女性が大声で俺を指差した。
何がなんだか解らない。
ボーカルの女性が俺の方に歩み寄って来た。
《な、なんだ…?》
『君は、好きになるね』
《何言ってるんだ…?》
『間違いない。君は私の事が世界で1番好きになるね。』
《意味が…》
『びびっと、きた感じ。
【運命】って言うの…』
『いいよ、君の事、一目見て気にいったし♪』
《意味が…》
『付き合ってあげる。』
《……?》
《はぁ!?》
俺は全く状況を理解出来ないでいた…
『また始まったよ、香澄の病気が…』
他のバンドのメンバーは呆れてる様子だった。
懐かしいね。
慌てる俺を見て笑っていたよね。
黙っていたけど…
本当は、あの時からなんだ…
君の笑顔を見た時から…
あの並木道での出会いが全ての始まりだったね。
君も覚えてる…
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