第一話

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「今日は雑誌の撮影が三本入ってるから遅くなると思う。」 慶斗は長方形のダイニングテーブルに並べられた洋食を前にして腰を下ろした。 「うわぁ~大変。じゃあ夜はいらない?」 最後の一品を片手に朔も慶斗の向かえに腰を下ろした。 「ごめんな。朔の手料理ほど美味いものはないのにな。」 慶斗は白のカップに注がれたブラックコーヒーを飲みながら残念そうに笑みを浮かべた。 「何言ってんのさ。仕事なんだからしょうがないって。」 まだブラックを飲むことができない朔は角砂糖とミルクを入れたコーヒーを飲んでいた。 「そう言ってもらえると有り難いな。」 慶斗の微笑みは長年共に暮らしてきた家族である朔でさえ見取れてしまう,そんな甘い誘惑を持ち合わせたものであった。
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