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「他でもない。『君ら』の痕跡は、確実に残っている、ということさ」
「……ですが、先ほども申し上げた通り、我々には親兄弟はおろか、友人すら……」
デイヴィットの反論を、スミスは軽く手を上げて制した。
納得いかない、と言いたげなデイヴィットの視線を正面から受けて、スミスはかすかに笑う。
「首席技術士官殿……君らの名付け親で、産みの親でもある人だが……会ったことはあるだろう?」
「J……ジャック=ハモンド殿ですか? 起動直後、少しだけお話しさせて頂きましたが、それが何か?」
首をかしげるデイヴィット。その姿を見つめ、スミスは笑みを浮かべたまま、更に続ける。
「その時、かの御仁が何と言ったか、覚えているだろう?」
問いかけられ、デイヴィットはあわてて起動直後のやり取りのデータを引っ張り出した。
忘れもしない、一番最初の『記憶』だ。
褐色の肌に癖毛の白髪頭を持つその人は、厳つい肩書きとは裏腹に人懐っこい笑顔を浮かべ、開口一番こう言った。
──初めまして。君はこの瞬間『デイヴィット=ロー』だ。何かあったら、いつでも来るといい。じゃあ、よろしく──
そう。
確かにあの時、その人はこう言った。
デイヴィットがまだ生き残れるかどうか解らないにも関わらず。
デイヴィットの思考を察しているのだろう。ひじ掛けに頬杖を付きながら、スミスは畳み掛けるように続けた。
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