I.稼動初日

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 薄暗く窓の無いほぼ完全な密室に、かれこれきっかり十分、『彼』は待機する事を命ぜられていた。  中央にぽつりと置かれた椅子に座り、何をするでもなく周囲を見回してみても、『目』から得られる情報は、愛想の欠片すら感じられない白い壁と、冷たく閉ざされた扉だけ。  しかしその向こう側では、所謂お偉いさん達が仕掛けられている隠しカメラによってこちらの反応を伺っていることだろう。  まるで、営倉だ。  見たことも、入ったことも無いそんな場所の単語が、ふと『彼』の脳裏に浮かんだ。  いや、『浮かんだ』と言うのは正しくはない。  視覚、聴覚など、あらゆる感覚から得られる情報を分析し、0と1で導き出された答が『営倉』という単語なのである。  それにしても。  再び『彼』は周囲を見回した。  すでに十五分が経過している。気の弱い『ヒト』であれば、見えない恐怖にかられ、叫び出す者もいるかもしれない。  だが、外見こそ完璧な『ヒト』ではあるが、彼はそういった心配とはおおよそ無縁の存在だった。  最新の遺伝子工学を応用し、中立機関である惑星連合が開発し作り上げた人工生命体『dolls』。彼はその二十一番目の完成品だった。
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