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そして現在、彼は正式に任務に就けるか否かの最終試験段階にかけられている。
ここをパスできれば、彼は有事において絶対の権限を手にして宇宙を駆け回り、できなければ即廃棄の道が待っている。
二十分が過ぎた。
さすがの彼も腰を浮かしかけたその時。目の前の扉が、前触れもなく開いた。
そこに立っていたのは、一人の男だった。おおよそ三十代半ば。立ちふさがった男の外見から、彼はそう判断した。
判断が曖昧になったのは、その重要な情報源となる目が色の濃いサングラスによって完全に隠されていたからだ。
困ったことに、目が隠されているとなると、感情や心中を分析するのは、難しい。
「君が012-0-021か」
おもむろに『製造番号』で呼ばれ、彼は一瞬、プログラムされている『不愉快な』表情を浮かべた。さほど大きな声では無かったが、それほどの影響を与えるに充分な物だった。
それを確認するかのように薄い笑みを浮かべ、現れた男は再び口を開く。
「……第一次試験合格だ。まずはおめでとうと言っておこう。来たまえ。実務試験に入る」
そう言い放つとくるりと背を向け歩み出す男の背に向かい、彼はあわてて声をかけた。
「あの……失礼ですが、貴方は?」
彼の言葉に、男は足を止め、肩越しに振り向いた。
「情報局のエドワード=スミス。階級は少佐だ。君の試験官を拝命した。他に質問は?」
「実務試験とおっしゃいましたが、一体……」
「フォボスで一波乱あった。詳しくは道すがら説明する」
何とも取っ付きにくい御仁だ。この先どう付き合うか。彼は少々考えあぐねていた。
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