49人が本棚に入れています
本棚に追加
※
「……発端はMカンパニーの強引な進出とも言われています。行政面だけでなく経済的圧迫が甚だしくなったことにより、不満分子の暴走に拍車がかかったとも考えられます」
惑星連合本部のあるテラから『一騒動起きた』フォボスへ向かうには、まず母星たるマルスに赴き、船を乗り継がなければならない。
そのマルス行きの船内で、スミス少佐は『彼』に対しマルスとフォボスの政情を説明するように求めた。
彼の返答に一つうなずいてから、スミス少佐はおもむろに口を開いた。
「で、その不満分子を背後から煽っているのは? デイヴィット=ロー中尉」
一方的に説明を求めておきながら、素っ気なくスミス少佐は尋ねる。その質問の末尾に、申し訳程度に付け足されたのが、彼に与えられた『名前』である。
それにしても。
薄暗い宇宙船内であるにもかかわらず、この『試験官』氏は相変わらずサングラスを外す気配はない。愛想のない口調も手伝って、有能な情報局員と言うよりは、むしろ裏の世界を知りつくした工作員といった様相である。
一体何者なのだろうか。
が、それ以上の分析を試みるのには、未だデータが足りない。とりあえず思考回路を停止させてから、デイヴィットは言葉をついだ。
最初のコメントを投稿しよう!