VI.疑問

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 自らの目前にいる『頭痛の種』に、デイヴィットは恐る恐る切り出した。 「あの……少佐殿……突入は、なんでしたら、自分が単独で……」 「すべてを見届けなければ、君の合否判定は不可能だ」  違うかな、と言うように見つめてくるスミスを目の前にして、デイヴィットは押し黙った。  もっともな言葉である。だが、同行を認めてしまうと、最悪スミスの生命を脅かすことになる。  適切な言葉を見つけ出せずにいるデイヴィット。その様子に、当の『心配される側』は、例のごとく唇の片端をわずかに上げて見せた。 「そこまで君が思い悩むことは無いさ。役に立たなくなれば、有無を言わさず処分される。その点は、私も君も、何ら差はない」  何を言い出すのだろう、この人は。  浮かび上がったその疑問を無理矢理飲みこみ、デイヴィットはまじまじとスミスを見つめる。  被験者の混乱を知ってか知らずか、スミスは更に笑う。 「何て顔をしている? 役目を終えた『モノ』は最終的に除籍される。君らも、覇研究員も、はたまた艦艇も。逆に役に立たなくなった『モノ』がいつまでも表舞台にしがみついているのは滑稽(コッケイ)だし、何より見ていて悲惨でみじめだ」  確かにその言葉は正しいのかもしれない。  けれども、『ヒト』のそれと、デイヴィット達……厳密に言えば『ヒト』ならざる物に突き付けられるそれは、根本的に違うのではないか。
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