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果たしてその違和感はどこから発生しているのだろうか。
デイヴィットは思考回路をフル回転させる。そしてある結論にたどり着いた。
「ですが、我々『doll』の除籍と、少佐殿の除籍は、根本的に異なると思います」
「……どういうことかな?」
かすかにスミスは、唇の端に微笑を閃かせる。
痛いほどに視線を感じながら、デイヴィットは続けた。
「我々は処分されれば、それで終わりです。後には何も残らない。ですが、少佐殿……ヒトが除籍された場合、その痕跡は必ずこの世界のどこかに残ります。……家族や友人を持たないヒトは、いないでしょうから」
一気に言ってしまってから、デイヴィットは恐る恐るスミスの顔を見やる。
そこには、件の笑みはなかった。
やはり、的はずれなことを言ってしまったのだろうか。
緊張した面持ちのまま、デイヴィットは返答を待つ。
長くて短い静寂を、スミスは静かな声で切り裂いた。
「……なるほど。君らの存在は、どうあがいても『虚無』と言う訳か」
ようやくの答に、デイヴィットは神妙な表情でうなずいた。それを確認してから、スミスは視線を室内に泳がせた。
「しかし、君には一つ失念していることがある」
「どういうことでしょうか?」
話が見えず、首をかしげるデイヴィット。
その反応をどう取ったかは定かではないが、スミスは改めてデイヴィットに視線を固定した。
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