VI.疑問

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 仮に、無理矢理病院へ引きずって行けば、下される評価が『不合格』となるのは確実だ。  痛み止と偽って強力な睡眠薬を服用させて、穏便に観覧席に着いてもらったとしても、結果は同じだろう。  そして、この突入作戦でスミスが今以上の負傷を負ったり、最悪死亡した場合には、やはり『無理な作戦を立案、実行した』として、『不合格』になるだろう。  八方塞がりだ。  立ち尽くすデイヴィットは、頭痛の種である当の本人から肩越しに見つめられていることに気がついた。  さて、どうする、とでも言わんばかりの視線を受け止めながら、デイヴィットは現状を再分析した。  試験官氏がこれだけの怪我を負った時点で、評価はマイナスへ傾いているだろう。  だとすると、よほどのことがない限りプラスに持ち込むことはできないだろう。  どうせ処分されるのであれば、少しでも残された『命』を有効に使いたい。  その結論に達した時、目前のスミスがおもむろに口を開いた。 「結論は出たかな?」  色の濃いサングラスを通して投げかけられた探るような視線に、デイヴィットは力強くうなずいた。 「はい。ですが、一つだけお願いがあります」  わずかに首をかしげるスミスに、デイヴィットは淀みなく答えた。 「これは、自分に与えられた課題です。突入から救出までの一切を、自分の一存に任せて頂けませんか?」 「と、言うと?」 「少佐殿には、自分の援護をお願いしたいのです。前線には、自分一人が立ちます」  揺らぐことのないデイヴィットの視線に、スミスの表情はふっ、とゆるんだ。 「では、ありがたく高見の見物をさせて頂くとするか」  その言葉に、デイヴィットは深々と頭を垂れる。  そして、『初陣』に向けてデイヴィットは足を踏み出した。
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