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「市、居るか?」
「あ…長政様。」
後ろからかかった声に、お市が振り返ると、そこには長政が立っていた。
「どうだ、新しい部屋の
感想は。」
「はい…綺麗、で…」
「綺麗で?」
「その…」
(どう言ったらいいんだろう…)
長政は続きを待っているようだが、言葉が出てこない。
「はっきりせぬか!」
「ご…ごめんなさい…」
長政が叫ぶと、びくりと怯えた様子になり、お市は声を震わせる。
(しまった…怖がっているではないか!)
「もういい。…で、どうなのだ。」
心では思うも、中々上手く態度に表せない。それどころか、突き放したような言い方になってしまう。
「…えっ?」
「気に入ったかと聞いておるのだ。」
「……はい。」
気に入っていないわけではない。お市は、自分の気持ちを正直に答えた。
「そうか。」
それだけを言い、長政は部屋から出ていってしまった。
(長政様…怒ってた…)
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