ACT.1-1 朱月の熱帯夜

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その日の朝私は、友人である美保に連絡したが、どういう訳か、今日はメールは、兎も角電話にすら出なかった。 ふと、あの音が頭をよぎった。 幻聴とは、思えないほどリアルで気味の悪いあの音…いったいアレはなんだったのだろうと考えたが、すぐにその考えを捨てた。いや、捨てずにはいられなかった。というのが適切であろう。 とりあえず私は、自分の部屋を後にし、リビングに向かった。リビングは、私の部屋のドアを開けてすぐのところにある。 私は、まず一つしかない椅子に座り、食パンにイチゴのジャムを塗って朝食をとることにした。 その時だ急に携帯が鳴り、私が携帯を開くとそこには、美保の名前が書かれていた。 私がその電話に出ると 「刹那、さっき変な電話したでしょう?イタズラは、やめてよね?」 と言って来た。なんのことか私には、さっぱりわからなかったため 「えっ?変な電話?それウチじゃないよ?つか美保出なかったじゃん。」 と答えると 「じゃあ、彼氏?変な低い声であつい、あついってこっちだって一緒だって伝えといてよ?」 美保は、そんな訳の分からないことを言って来た。 「ごめん、ウチ彼氏いないし…。」 と言い返すと美保は、冗談でしょう?と言って笑ってきたが、実際に私…石井 刹那には、彼氏などいないのである。だとすると、美保はなんの声を聞いたのだろうと思って背筋がぞくぞくした。「あははは…彼氏さんによろしく言っといて、じゃあ切るよ?」 「………うん。」 私がそう言うと直ぐに電話は切れ プープーと音がしていた。私は、携帯の電源を一度だけ軽く押し、閉じてから、ポケットにしまい込んだ。
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