序章~帰り道

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時間が止まったかの様な静けさに包まれている。 暗く、静かな空間に立つと僅かな変化にも敏感になるものだ。どこからか匂う心地良い香りに励まされ、道案内の街灯に勇気を貰い、見上げた夜空に感動する。 そして微かな足音に恐れおののくものだ。 この男も例外ではない。 …カッカッカッ… 50mほど進んだ所で男の五感が働いた。 どこかの民家からやってくるこの匂い、そう、カレーだ。高級料理に勝るとも劣らないこの香りに、自然とお腹が空いてきた。 空腹を紛らすかの様に、ふと灯りに眼を移す。街灯に群がる虫達が踊り躍り、男の視線を釘付けにした。虫達は上をご覧と導くのだった。 そして無意識に夜空を見上げた。 ネオンとは異質の光が輝いている。星と言う名のホスピタル。男の心を優しく癒し、明日への活力を注いでくれる。 男は足取り軽やかに駅を目指すのだった。 …カッカッカッ… …カッカッカッ… 100mほど進んだだろうか。 うっすらと線路沿いの三差路が映りだした。 そこを曲がれば駅だ。と、考えた刹那、ある気配を感じた。 いつもなら気にならない事だが邪魔する雑音が無い今、気にせずにいられなくなった…………
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