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「うるせーよ!何してんだよ!」
苛立った恭平は、乱暴に通話ボタンを押し叫んだ。
やめて、やめて!!
人が争う声と、物が割れる音が怖くて怖くて、耳を塞いでうずくまった。
『出てきなさいよ!あんたにいくら使ったと思ってんのよ!!』
「俺はイロを売るのが商売なんだよ!お前が勝手に金使ったんだろ!」
私に向けられる憎悪が怖い、人が争う声が怖い、だから私は、心を持たない人間になった。
『結婚も破談して、結婚資金まであんたに注ぎ込んで来たのよ!!
……恭平との赤ちゃんだって堕ろしたのも…、ナンバーワンにする為に我慢した!仕事辞めたら、結婚するって約束だったじゃない!!』
「俺は、愛とか結婚とか夢見てる人間が1番嫌いなんだよ!そんなもの信じてる奴を見ると虫酸が走る」
ゾッとするくらい冷たく言い放った恭平の言葉に、モニターからの金切り声が聞こえなくなった。
消えていった小さな命にさえ、罪悪感を持てない恭平。
胸が張り裂けそうに痛くて、突き刺さる言葉も、この状況も、過去のトラウマもすべて遮断するように、目を力いっぱい閉じた。
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