雅―ｍｉｙａｂｉ―

羽をもがれた蝶

「自分の男だけは違うと思ってんの？所詮、綺麗事で着飾った人間なんて、上っ面だけなんだよ」

携帯のディスプレイを向けられ、私に対する汚い言葉が、どんどん闇の世界へ引きずり落とす。

「ほら、お前に浴びせられる言葉を見ろよ！
これがお前のすべてを知った人間の反応なんだよ！」

「…っ、止めて…」

「現実を受け入れろよ！」

顔を背けても、背けても、頭を無理矢理捕まれ、涙でディスプレイが見えない。

汚い、汚い、汚い、汚い。

自分に浴びせられる言葉も、自分の心も、どんどん濁って、苦しくて苦しくて息ができない。

「嫌――――っっ！！」

携帯を払いのけると、スローモーションのようにゆっくりと落ちて、ガシャーーーンと私の心と同じように壊れる音がした。

その場にへたりこみ、泣き崩れた私を、後ろから恭平が抱きしめた。

「……俺達は、普通には生きられないんだ」

いつかも言ってた恭平の言葉が、波紋のように広がり、何度も何度もこだまする。