翼に乗った蝶

4/56

5777人が本棚に入れています
本棚に追加
/756ページ
通話を終え、携帯電話をバッグにいれようとすると、また着信音が鳴った。 「はい」 『着いた?駅の駐車場にいるから。車はね、水色のプリウスなんだけど…』 ホームから見渡すと、停車しているプリウスから、携帯片手に髪をかきあげる、田舎の雰囲気に似つかわぬ女。 私と目が合うと、こっちよ!と大きく手を振った。 大丈夫。 胸は懐かしさと切なさで痛むけど、張り裂けそうな程、残酷な痛みはない。 今日は、一歩踏み出す為の勇気を固く持ち、10年振りの故郷に帰って来た。
/756ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5777人が本棚に入れています
本棚に追加