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通話を終え、携帯電話をバッグにいれようとすると、また着信音が鳴った。
「はい」
『着いた?駅の駐車場にいるから。車はね、水色のプリウスなんだけど…』
ホームから見渡すと、停車しているプリウスから、携帯片手に髪をかきあげる、田舎の雰囲気に似つかわぬ女。
私と目が合うと、こっちよ!と大きく手を振った。
大丈夫。
胸は懐かしさと切なさで痛むけど、張り裂けそうな程、残酷な痛みはない。
今日は、一歩踏み出す為の勇気を固く持ち、10年振りの故郷に帰って来た。
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