翼に乗った蝶

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恭平が、どこで生きてるかなんて、もう分からない。 2人で過ごした記憶が曖昧で、『1ヶ月一緒にいた』と聞かされても、まるで他人事のよう。 恭平が何を語り、何を思い、そして最後は何故消えたのかなんて、廃人だった私に声が届くはずもなく、何も思い出せない。 だから、弱い恭平の周りに愛してくれる人がいる事を願う。 「仁科先生って、すごく優しい先生ね。 実幸の事を、本当に思ってくれて…」 信号待ち。 前を見据えたまま、姉が呟く。 あの時、唯一病院に駆け付けてくれたのは、仁科だった。
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