1話 大暑の暮れに

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タカさんは今まさに僕が向かっている西希司島の住人である。 島の中じゃ変わり者で有名だ。 もちろん本人はそんな事知るわけはない。 「やっと思い出したか!かっかっか!」 「タカさん何やってるんだいこんなとこで?」 「買い物だ。おめーは何やってんだ。もう卒業したんか?」 「まだあと半年あるよ。今は夏休みだからね。タカさんの方がボケてんじゃん」 「かっかっかっ!座布団一枚!」 「いらん」 船は波に揺られゆっくりと西希司島へと近付いていた。 いても立ってもいられずに、先に出口の所で待つ。 船は旅を終えて小さな港へと到着した。 「じゃあなタカさん」 船から階段を下り、久々の故郷の地に足をつける。 「ただいま…」 そんな僕を祝福するように一陣の風が吹く。 夏だけにその風は決して涼しいものではないが、すごく心地のいい風だった。
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