1話 大暑の暮れに

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そこにはいけない本がまだ確かにあった。 「よし!」 何が『よし!』なのか自分でもわからないが、心のどこかで安心した気がする。 窓の外を覗けば西希司の町が一望できた。 とは言っても、民家の数も大したことないので、田舎の風景が見えるだけである。 その奥には海、さらにその先にはほのかに陸地が見える。 「はぁ~やっぱ落ち着くなぁ」 地元が一番、とはよく言ったものだが、今改めて痛感していた。 ベッドに横になり携帯を取り出す。 今日は8月2日 僕がこの島へ帰ってきたのには理由がある。 友人、と言うか西希司出身の幼なじみの電話であった。 久住裕太(くずみゆうた)。 高校に入ってからは全然連絡とかとっていなかった。 だけど夏休みに入った頃、突然裕太から一本の電話が入った。 僕は珍しい友人からの連絡にちょっと嬉しさを覚えた。
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