1話 大暑の暮れに

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電話の内容は大した事ではない。 久しぶりに他愛ない会話を続けただけだ。 ただ、最後に裕太は言う。 「お前、今年の夏休みは西希司に帰らないのか?」 「どうかな…バイトあるし」 「帰って来いよ。話がある」 「話って…電話じゃ言えない事?」 「そうだな。直接会って話したい」 「じゃあ裕太の今の家に行くよ」 「いや、西希司じゃないとダメなんだ。夏休みに俺は西希司に戻る。だからお前も戻ってきてくれ」 裕太からの頼み。僕はバイトを今月いっぱいまで休み、そしてこの島へと帰ってきたのだ。 「さて、あいつはもう帰ってきてるよな」 携帯のメモリから裕太を探し、そして通話ボタンを押した。 数コールの後、裕太は電話に出る。 「もしもーし」 「お、裕太。帰ってきたよ~」 「純哉か、ようやく帰って来やがったか!」 「裕太今どこにいんだよ」
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