異夢

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ひとときの享楽に溺れることを好む城主は名を相馬といった。 猫はその見目麗しい容貌と忍ぶ者として相馬の目に止まった。 普段は小姓として務めを果たす猫は、ごくたまに命に従い城を出る。 その命とは、暗殺だ。 贈り物のひとつとして猫を送り込み、その主を殺める。 小姓とはいえ、見目麗しき猫は夜伽をもとめられることもある。いわゆる色小姓として猫は贈り物となる。 そして次々と命に従い続ける猫を相馬は慈しむ。 血の舞う着物のままふらりと帰城する猫にいつも相馬は悦ぶ。 そして、よくやった……と猫を褒める。 猫は命に従い服従することしかしらない。 忍ぶ者として育てられた由縁と言えばそれまでだが猫自体、自我があるのかさえ分からなかった。
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