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――――――
アクティは薄暗い木々のトンネルを歩いていく。
出ていく事は誰にも言わなかったし、何も言わなかった事に後悔はしていない。
両肩が少し寂しいくらいで。
(みんな、怒るだろうなぁ。サレナなんて特に・・・。)
まだそれほど離れていないのに、もう1日2日も会っていないような感覚に陥っている。
それほどずっと共にいたのだ。
(大丈夫。1人でも、大丈夫!)
そう自分に言い聞かせて視線をあげる。
するとそこには、2つの人影があった。
誰なのか暗くてよく見えないが、見覚えがあった。
「水臭いじゃねぇか、黙って出て行くなんてよ。」
「そうですよ。僕達は貴女についてここまで来たんですから。」
2人の男女。
どこかで聞いた声と口調。
刹那、強い風が吹いて木の葉が揺れ、月光が差し込んだおかげで人影の正体がハッキリ見えた。
「サレナ!それにテイン君!?なんでここに!誰にも言わずに出てきた筈なのに・・・。」
2人が寝ているのを確認し、気付かれないように気配も消して部屋を出たはずだった。
ここにいるはずがない。
驚くアクティの顔を見て、2人は顔を見合わせて笑った。
「2年も一緒にいたんだぜ?考えてる事くらいお見通しだっつーの!」
「あの時不自然に振り向いた後から様子がおかしかったですし、案の定でしたね。」
「2人共・・・でも・・・。」
何かを言い出そうとすると、サレナが近付いてきて口を抑えた。
「駄目なんて言うなよ?言ったら無理にでも連れて帰るぞ。アクティが行くなら、アタイ達も行くんだからな!」
そう言うと手を放して二カッと笑った。
テインも同じ気持ちのようだ。
こんな身勝手な自分を心配して来てくれた2人。
そう思うと嬉しくて涙が溢れてきて、堪えられなかった。
「泣くなって!さぁ、行こうぜ!どこにでも付いて行ってやるからよ。」
「・・・うん!よろしくね、2人共。」
涙を拭き、顔を見合わせる。
3人とも迷いはなかった。
そしてここから、長い長い探求の旅が始まったのだ。
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